Pachypodium baronii var. windsorii の一番花に対し4月6日に人工受粉を行いました。4月10日には落花。一番花の人工授粉が成功し子房が膨らみ小さな種さやが確認できるようになりました。ウィンゾリーの人工受粉が成功したかどうかは落花した時点で分かります。落花した時点で子房が退化している場合は人工受粉に失敗しています。1本の花枝から4~6個の蕾が形成されます。しかし、全ての花に対して人工受粉を行うと、株が弱り次年度の開花に影響が出るので人工受粉する際には受粉させる数を調整する必要があります。
開花をさせ楽しむ栽培環境と、種子の採取を目的とする場合には栽培環境のコントロールは異なります。
4月5日 一番花 開花(20株:20個開花)
4月6日 一番花 人工授粉を行う(A株↔B株) ※開花1日目
4月10日 一番花 落ちる※Windsorii(ウィンゾリー)は花首から落ちます
4月11日 二番花 開花(20株:20個開花)
4月12日 二番花 人工授粉を行う(A株↔B株) ※開花1日目
4月16日 三番花 開花
4月19日 三番花 人工授粉を行う(A株↔B株) ※開花3日目
※A株実生25年のPachypodium baronii var. windsorii
※B株実生25年のPachypodium baronii var. windsorii の血統の子孫
【人工受粉の結果】
一番花 A株 成功 / B株 成功 ※開花1日目
二番花 A株 成功 / B株 成功 ※開花1日目
三番花 A株 / B株 ※開花3日目(落花予定:4月21日)
※A・B株の花枝の6個の蕾について開花のタイミングと受粉の記録として残しています。実際には開花株が多いので適宜ランダムで人工授粉を行っています。受粉の方法についてはデータ採取の目的もあるので各受粉ごとに変えて行っています。
開花のタイミングの調整については、自然栽培の場合天候に正直左右されるので、観賞用または趣味として栽培する場合には基本的には温室で温度を調整することで栽培をすることが可能です。しかし、種子を採ることを目的とした場合には異なります。4月の天候であるならば、まず気温が低い、天候が快晴の日が続かず日照不足になる日が多くなります。
日照時間が少ないと、花枝が伸び蕾が形成されたとしても蕾の成長が悪く落蕾する場合があります。ですから、開花のタイミングを調整するためには人工光源を使用する必要があります。栽培条件としては植物を同一の環境に順化させるために鉢や用土は同じものを使用した方が水張りの調整等もしやすくなります。
ウィンゾリーを含め植物には短日植物、長日植物があり人工光源を使用する場合には、目的にあった人工光源を選択する必要があります。開花調整を行う場合には450nm〜525nmの波長照下できる環境を用意しておくと蕾の形成や開花が促進する傾向があります。
450nm〜525nmの波長を調整できなくても白色LEDでも多少の効果はあります。白色LEDでも開花が促進できるのは白色中に青色の成分が含まれているからです。ウィンゾリーの自生地には乾期と雨期があります。雨期に葉を多く展開させ株に養分を蓄え、乾期では蒸発を防ぐために葉を落とします。開花は葉を落とし花枝を伸ばし花を咲かせ、葉を大きく展開し成長していきます。
もちろん、赤色LEDだけでも開花させることは可能ですが、蕾の形成や開花までを考えた場合は450nm〜525nmの人工光源の方が開花率が高くなります。まだまだ実験段階ではありますが人工光源も一つの栽培方法として使用し、種の保存活動を行っていきたいと思います。
植物には660nm付近の光源が適していますが、栽培者が色としての違和感がなく落ち着けるのは白色の方が適しています。660nm付近のLEDだけで植物を栽培することは適していません。もちろん人工光源は電気を使用するので、環境にも配慮する必要があり、植物の生育と自然への配慮、人との共存も含めて今後も波長成分と植物の成長に関するデータを収集していきたいと思います。