日本ではコーヒー豆は100%輸入に頼っています。TPPとコーヒー豆は関係があるのでしょうかと最近質問をもらいます。
コーヒーとTPPは関係があります。輸入に関しては、特恵関税制度(GSP:Generalized System of Preferences)といって、開発途上国の輸出所得の増大,工業化と経済発展の促進を図るため,開発途上国から輸入される一定の農水産品,鉱工業産品に対し,一般の関税率よりも低い税率(特恵税率)を適用する制度が適用されています。ここまでは開発途上国に対しての支援の一部として受け入れ理解することができます。
しかし、コーヒー豆に関税がかかり原材料が高くなった場合には、飲まないまたは飲めないといった選択肢もでてきます。飲まない人にとってはあまり関係ないかもしれませんが。本当に影響は無いのでしょうか。
2013年米国通商代表(USTR)外国貿易障壁報告書 平成25年4月4日 外務省
日本政府は「保険」「透明性/貿易円滑化」「投資」「規格・基準」「衛生植物検疫措置」5つの項目を交渉として挙げていますが、米国側はこの5つの項目に加え、「知的財産権」「政府調達」「競争政策」「急送便」の4項目を加えた9項目を今後の二国間交渉のテーブルに乗せようとしています。
1 輸入政策
(1) 牛肉輸入制度
(2) コメ輸入制度
(3) 小麦輸入制度
(4) 豚肉輸入制度
(5) 牛肉セーフガード
(6) 水産品
(7) 牛肉,かんきつ類,乳製品,加工食品への高関税
(8) 木材及び建築資材
(9) 皮革製品・靴
(10) 税関問題 <—非関税措置については交渉項目
2 サービス障壁
(1) 日本郵政 <—非関税措置については交渉項目
(2) 保険 <—非関税措置については交渉項目
ア かんぽ生命
イ 外国保険会社の現地法人化
ウ 共済
エ 保険契約者保護機構(PPC)
オ 保険の銀行窓口販売
(3) 他の金融サービス
(5) 電気通信
※日本政府仮訳では(4)が抜けているので仮訳原文ママ(5)とする
ア 固定回線相互接続
イ 支配的事業者規制
ウ ユニバーサルサービス
エ モバイルターミネーション(携帯電話接続)
オ 新しい移動体無線免許
(6) 情報技術(IT)
ア クラウドコンピューティング
イ 医療IT
ウ プライバシー
エ IT及び電子商取引
オ 海外からのオンライン・コンテンツの消費税
(7) 司法サービス
(8) 教育サービス
3 知的財産保護 <—非関税措置については交渉項目
4 政府調達 <—非関税措置については交渉項目
(1) 建設,建築及び土木工事
(2) 情報通信(IT)の調達
5 投資障壁 <—非関税措置については交渉項目
6 反競争的慣行 <—非関税措置については交渉項目
(1) 独占禁止の遵守及び抑止の向上
(2) 公正取引委員会の手続的公正と透明性の向上
(3) 談合撲滅のための手段拡充
7 その他分野及び分野横断事項の障壁
(1) 透明性 <—非関税措置については交渉項目
ア 諮問機関
イ パブリックコメント
ウ 規制と規制執行の透明性
(2) 商法
(3) 自動車関連 <—非関税措置については交渉項目
(4) 医療機器及び医薬品
(5) 栄養補助食品
(6) 化粧品及び医薬部外品
(7) 食品及び栄養機能食品の成分開示要求 ★★★★★
(8) 航空宇宙
(9) ビジネス航空
(10) 民間航空
(11) 運輸及び港湾
★★★★★マークの箇所がポイントになってきます。
日本では東京都が2003年から都内を走るディーゼル車両の排ガスにPM規制を打ち出したことで知られています。規制導入のきっかけになった1999年の石原慎太郎都知事(当時)の会見では、知事がペットボトルに入った黒い物質を報道陣の前で振った映像を記憶している人もいると思います。あれがPM2.5です。あの煤煙の固まりのような物質が呼吸器官に入ってくると考えただけで大半の人が気持ち悪くなると思います。
今の中国の空気はPM2.5が日本の基準の10倍から30倍の水準で漂っています。中国の環境問題は1990年代から存在しています。石炭を大量消費し、対策もとらないままに空中に放散した結果、硫黄酸化物、窒素酸化物による大気汚染が深刻化、大気中の物質が雨とともに地上に降下したため、中国の沿海地域の主要な湖、河川は生物の生存が困難なほど酸性度が高まっています。
水質汚染はそれだけではありません。各地の化学工場や染色、メッキ、セメント工場などが廃液を処理しないまま河川に流し込み、発がん性物質が住民の上水道の水源に流れ込むという事態も発生しています。20005年には吉林省の化学工場で爆発事故が発生、有毒物質が中国東北部を代表する大河である松花江に流れ込み、下流域で取水が禁止されたというニュースは記憶に新しいかもしれません。
日本でも大人気のスターバックスは中国南部・雲南省でコーヒー農園と加工施設を建設し、2015年までに中国で1,000店を開業する計画を発表しています。中国についでインドでも生産販売を急いでいます。ちなみに、スターバックスはGMO(Genetically Modified Organism の略)遺伝子組み換え種子を利用しないと宣言はしています。ベトナム含め東南アジアではアメリカから莫大な資金が投入され始めました。ベトナム戦争で枯葉剤を開発した企業として知られている、米モンサント社はベトナムで2015年までに遺伝子組み換え作物の普及を目指すと表明しています。あまり知られていませんが、インスタント・コーヒーで知られている、米ネスレ社は、モンサント社、モンサント・カーギルの傘下にあります。すでに、ネスレがメキシコで 遺伝子組み換えコーヒーの承認を求めており、コロンビアでは、すでにコーヒーの遺伝子組み換えの試験栽培が開始されている。
2008年に公開されたドキュメンタリー映画「おいしいコーヒーの真実」生産国の実体、米スターバックスの暴露話などが描かれており、一杯330円で販売しているスターバックスのコーヒーのうち、コーヒー農家が手にする金額は、わずか3~9円だそうです。
これが、何を意味するかといえば、GMO種子が既にコーヒー栽培に使用され始めた。または、今後使われている可能性が高まったという点です。コーヒーは栽培から収穫までに時間が必要となります。プランテーション化することにより安い人件費で効率よく栽培収穫をしていく必要があります。農業では病害虫対策として消毒等を使用します。消毒を使うことによりコストもかかります。なので、病気にも強く収穫量の多い品種を作り出そうと研究開発が進められています。当然自然界には自然交配がにより遺伝子の組換えは起こります。人工的に起こした遺伝子の突然変異を利用することも可能であります。この2つの異なる点は、人工的に遺伝子を組替えるために、種の壁を越えて他の生物に遺伝を導入することが出来、農作物の改良の範囲を大幅に拡大できるということと、改良の期間が短縮できるという事が異なります。つまり結果ではなく、行程が問題になります。遺伝子組み換えを使わない栽培方法としては、たとえばコーヒーでは、台木にロブスタ種を使い、接木上部にアラビカ種を接木して線虫対策を行ったりもします。病害虫対策としてバイオロジカルなコントロールを行いますが、全ての産地や農園で行なっているわけではありません。リベリカ種も発芽率が低く成長に時間がかかるので、根本的な遺伝子操作を行う研究が進められています。
農薬の使用量や産地、環境汚染された地域、またはGMO種子から栽培されたコーヒー豆が国内に入ってきてそれをコーヒーや缶コーヒー等に加工した場、本当に安全なコーヒーを飲んでいるかがわからない状態になってきます。
厚生省指定食品が制定されており、指定食品以外の商品の遺伝子組み換え表示には不要となっています。指定食品に含まれていないコーヒーは当然表示不要になります。では、記述をあえて出来るのかといえば、現時点では流通しているコーヒーにGMOが存在しないという暗黙のルールが存在するため、今後も嗜好品であるコーヒーが指定食品に追加されることはないと思います。嗜好品であるコーヒーが、GMOで遺伝子組換えしてあるか、農薬まみれの環境下で栽培してある、劣悪な品質管理・輸送してある場合など本当に安心かどうかの判断が消費者にはできません。
嗜好品であったコーヒーではありますが粗悪品になる場合もあります。「人を良くする」と書いて「食」と書く漢字の意味を国民誰もが考え直す時期に来ているように思います。
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